11: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)17:34:04 ID:Vve
(1/2)
昨年の話。大学が夏期休暇に入り暇をもて余した私は、同じく暇をもて余す友人と二人で肝試しに行くことにした。
肝試しといっても心霊スポット凸なんて大したものじゃなく、深夜に近場にある古びた神社へ行って写真を何枚か撮影し帰って来るだけというシンプルなものである。

肝試し当日、私たちは神社の長い階段の下に集合した。深夜だが夏独特の蒸し暑さで、首もとが軽く汗ばむ状態だった。
暑い中、長く急な階段を上らなければならない。そう考えると少々げんなりしたが、二人一緒に階段の数を数えつつ神社に向かった。
30段目を数えたところで階段が終わり、神社に到着した。
暗闇の中、懐中電灯に照らし出される神社は迫力満点で、暑さと階段のきつさにだだ下がりだったテンションは一気にヒートアップした。
私たちはデジカメとスマホで各々思い思いの風景を撮影し、最後に御賽銭を投げ込んで神社を後にした。

12: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)17:34:49 ID:Vve
(2/2)
神社を帰る際も、長い階段の段数を数えることになった。私は友人と共に、小声で段数を数えながらゆっくりと階段を降りた。
27段目。
そこで階段は終わった。上るときより3段も少ない。
私と友人は不思議に思い、暑さを忘れてもう一度階段を上った。やはり30段である。
そして今度は慎重に一歩一歩踏みしめながら階段を降りた。
26段。
さっき以上に段数が少なくなっている。

さすがに不気味に思った私たちは、無理矢理数え間違いと結論付け解散した。だがお互いにどこか釈然としない思いを抱えたままであった。
しかしこの不思議な出来事の原因はすぐに判明した。
後日確認した神社の写真。その中にあった階段と鳥居を写したもの。
そこには 、階段の最上段に折り重なるように倒れる数名分の人影が確認できたのだ。

そう、私たちはあの夜、"彼ら"を踏みしめ神社へ到達したのだ。
終了

14: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)17:38:12 ID:Vve
耳◆bBolJZZGWwさんの作品

百物語が開催されるときいて当方も何か寄稿しようとノートパソコン(以下PC)の前に座った瞬間、背筋が凍った。
真っ黒なディスプレイに映りこんだ部屋の隅っこの方に何やら人影が見えたのだ。
こういうのは気にしたら敗けだ、さっさとPC立ち上げちゃえと電源を入れる。PCが起動し画面が明るくなった。これで部屋も映らないし安心だ。
しかし、起動後すぐに画面が真っ暗になりうんともすんとも言わなくなった。
充電が切れたのだろうと思い、充電用のコードをコンセントに挿すため机の下を覗きこんだ瞬間絶句した。

真っ白な手が一本、コンセント周辺をうねうねと蠢いていたのだ。
恐怖のあまり声をあげることもできなかったが、即座に家族のいるリビングへ逃げ込んだ。
それ以来人影も白い手も見ていない。まあ2度と見たくないが。
【終】

16: 川瀬◆8DcQWhttmU 2015/02/14(土)17:42:29 ID:ZYz
恐怖の犬小屋(1/2)

むかし、うちの家にクロという犬がいた
俺の小さいころに死んだので俺はあんまり思い出がない。
しかし両親にとってはとても愛着があって家族同然のペットだったようだ。
クロが死んだ後、両親は新しいペットを飼おうとしなかったので、クロの思い出が残る犬小屋は
空き家のまま庭にぽつんと残された。
俺の10歳年下の妹は小さい頃からこの犬小屋に近づくのをとにかく嫌がった
何故だかわからないが酷く怖がっていた
一度、妹のゴムまりが犬小屋の後ろに行った時、妹が泣きながら怖いので取ってきてと頼む
ので、なんで犬小屋が怖いのか訊いたら「中に怖いやつがいる」という。
もちろん犬小屋は空き家なのだが、妹は絶対にいる、と怖がっている。
ゴムまりを取ってやった後で俺や父が中を覗いてみたが何もいなかった。
しかし母によれば、近所の人から、お宅のペットが夜に変な声で吠えてうるさかった、と何回
か苦情が来た事がある と言うのだ(うちにはクロが死んで以来ペットはいないのに)
母は、何かいるのかねえ と、不気味なことを言う。
実は俺も夜中に犬小屋のあたりから大きな叫び声のような声(犬のなき声ではない)を聞いた
ことがあったため本心では心細かった。

17: 川瀬◆8DcQWhttmU 2015/02/14(土)17:44:03 ID:ZYz
(2/2)

そして中学3年のある晩、大雨の夜だったが、勉強を終えて寝ようとすると2階の窓の所で
父が俺を無言で手招きしているのに気付いた。
この窓からは あの犬小屋が見えるのだが、父の様子から何か尋常でないことが察せられた
俺は窓のところによって父に言われるまま下を見下ろした、そこにはあり得ない光景が広がっていた。
雨の降りしきる中、犬小屋の入り口から白い人影が入ったり出たりを繰り返している
ひょろりとした格好で雨の中をふらふらと歩き、あたりをうろついた後また犬小屋に入っていく、
2体以上いた。
人間とは思えない、父も「声を出すな」と小声で言った。
次の日 不安に思いながら学校から帰ると犬小屋はきれいさっぱり撤去され、その跡はコンクリ
でガッチリ固められていた。
父が午前中に業者をよんで一気にやってしまったらしい。
いまでもあの夜見たものが何であったかは謎である。

【了】

19: 宵待草◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)17:59:38 ID:nGv
『整骨院』 宵待草◆zGmkUMDv/mqt

数年前の話。
その当時付き合ってた彼が腰が痛いというので整骨院までつきあってあげた。
整骨院デートというか、何をするんだろう、というくらいの軽い気持ちだった。

行った時間が良かったのか、そこは拍子抜けするほど空いていた。
受付に持参した保険証を提出して名前を呼ばれるまで待つ。
先に家族が一組(中年夫婦と子供2人)来ていて、その人達から呼ばれて入っていった。
待合室には四方に長椅子があり、座っているのは私たちとその家族だけだった。

やがて私の名前が呼ばれた。
診察室に入ると院長から「姿勢が悪いですね」という指摘。
やっぱりそうかなと思いつつ整体をして貰ってなんとなく終了。
私が終わった後に彼が呼ばれて入っていった。

しばらくして体がほぐれたのか、上機嫌になった彼が戻ってきた。
その帰り道。体が軽くなったと喜んではずむように歩いている彼に

「人が少なくて良かったね。待たされなくてすんだし」と私が言うと
「いや…待合室にいたよね。…たくさん」
「え…」

彼が言うには四方の長椅子にびっしり霊がいただろうとのこと。
院長先生は拝み屋でお祓いもするのだとか。

私は彼がはいわゆる見える人だったの思い出した。

その後、引っ越ししてしまったのでその整骨院がどうなったのかはわからない。

【了】

21: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)18:18:33 ID:Vve
葛◆5fF4aBHyEsさん
手袋

祖母は編み物が好きだった
勿論それは趣味の領域を出ないものだったけれど、私は祖母の作ってくれた服が大好きだった
祖母が亡くなる前年、私に手袋をくれた
それは、リボン柄が編み込まれたとても可愛らしい手袋で、私は何年もその手袋を使っていた
何年も使っていると、手袋はボロボロになった。加えて成長期なこともあって、「この手袋は今年で最後かなあ」なんて思っていた
新しい手袋を買いに出掛けてみるけれど、どれも祖母のものほどしっくり来ない

そんなある日、私は友達と高台にある公園に遊びに行った
元・お城の跡に作られた公園なので、石垣とお堀が未だに残っている
皆でボール遊びをしていると、ボールがお堀の方へ飛んでいってしまった
慌てて追いかけると……あった
良かった、ギリギリお堀に落ちてないみたい。手すりに引っかかってる
そんなことを思いながら鉄棒の横を通ると、突然ぐいっと右腕が引っ張られた
「えっ」
驚いて振り向いた私は、もう一度驚いた
引っ張られたと思ったのは間違いで、私の手がしっかりと鉄棒を握っていたのだ
「えっ、えっ??」
私は、鉄棒を握ろうなんて思っていない。むしろ握った手を離したいのに、指一本動かせない
自分の手が自分のものじゃなくなったみたい
半泣きになりながら左手で指を引き剥がそうとしたその時だった
グラッ……と地面が揺れて、私はその場にへたり込んだ
今思えば震度4くらいだったと思うのだが、滅多に揺れたことが無い地域だっただけに、辺りがにわかに騒がしくなった
いつの間にか、右手は鉄棒から離れていた
ボールは、揺れたからかお堀の方に落ちていったようだ
もし、ボールを拾いに行っていたら、弾みで落ちていたかもしれない

「きっとばあちゃんが守ってくれたんだよ」
帰って両親に話すと、父がそう言ってくれた

その手袋はもう小さくなって手は入らないけれど、今も私の机の上に飾ってある



24: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)19:37:41 ID:nGv
【炬燵の中】 雷鳥一号◆jgxp0RiZOM

友人の話。

ある冬の夕暮れだったという。
バイトを終え、一人暮らしのマンションに帰ってきた。
テレビのスイッチを入れてから炬燵に飛び付き、足を突っ込む。

足指の先が、ムニっと何か柔らかい物に触れた。
「アレ?」と思った次の瞬間、それは思い切り彼の足を蹴ってきた。
慌てて炬燵布団を跳ね上げ、中を覗き込む。

誰かの足が覗いていた。片足だけ。
臑毛が濃く生えたそれは、直ぐさま奥の方へ引っ込んだ。
混乱しながら炬燵本体に手を掛け、卓袱台返しの要領で一気にひっくり返す。

カーペットの上には、炬燵の備品以外何も確認できなかったという。

26: 宵待草@◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)19:40:14 ID:nGv
『足音』 宵待草◆zGmkUMDv/mqt


大学の先輩の話。

夜の実験室にこもるのってあまり良い気分じゃないんだよね。
その日はどうやら私だけが来ていたようで、朝から夕方まで誰にも会わなかった。
窓の外が薄暗くなった頃だったかな。後ろの方でドアが開く気配がしたの。

コツ、コツ、コツ…

と靴音がして、私と同じように実験しに誰か来たんだなーと思った。
「お疲れさまです」と振り返らずに声をかけたんだけど、返事がない。
その時はまだ変だとは思ってなかったんだけど。
しばらくしてまた

コツ、コツ、コツ…

と靴音がしたので、さっき来た人が帰るんだなと思った。
振り返ったら、白衣の後ろ姿が見えて、ちょうどドアからその人が出ていく所だった。
それで、一緒に帰ろうと声をかけるためにドアを開けたら、もう誰もいなかったんだよね…。

とにかくびっくりして急いで家に帰ったわ。

結局、あの日私以外に実験室を使った人はいなかったみたい。
後でよくよく考えてみたら、あの靴音もおかしかったんだよね。
実験室に入るのには靴を履きかえないといけないからあんなに響く訳ないし。
あの時間に外部から人が来たとも思えないし…。

今は実験する時はカセットテープを大音量でかけることにしたの。

一人で実験するのはまだ怖いんだけどね…。

【了】

28: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)19:54:58 ID:nGv
「お久しぶり」 葛◆5fF4aBHyEs


「お久しぶりです!」
唐突に掛けられた声に振り向いたが、後ろに立っていたのは全く知らない男性だった
……ああ、自分が呼び止められたわけじゃなかったのか。勘違いして恥ずかしいな
そう思って足早にその場を立ち去ろうとすると、
「ちょ、ちょっと!××さん!」
……慌てた声で、呼ばれた名前は自分の名前だった
えぇ?確かに自分は人の顔覚えるのは苦手だけど……
訝しげな自分に、その男性も首を傾げ、
「もしかして、オレのこと忘れてます?○○って言うんですけど……」
聞き覚えの無い名前。顔を覚えるのは苦手でも、一度聞いた名前はそうそう忘れないハズなんだけどなあ
「えっ、えっ、だって3ヶ月前に会ったじゃないですか。仕事の席で……△△って場所で……オレは上司の□□さんと一緒で、そちらは◇◇さんと一緒だったでしょ」
◇◇は確かに自分の上司だけど、そもそも一緒に仕事したことは無かったような……?
でもやけにリアルな説明だった。時間は何時で、天気はこんな感じだったとまで言い募る様子は、嘘に見えない
記憶になくても容易に想像がつく説明に、次第に自分でも「そんなことがあったのかな」と言う気になってくる
でも、どうしても思い出せない
「うーん……すみません……」
知ったかぶって話を合わせようかとも思ったが、結局頭を下げた自分に、男性はうなだれながら去っていった


その男性と再会したのは3ヶ月後
仕事の件で、向こうは□□さんという上司と一緒で、自分は上司の◇◇と一緒で、△△という場所での話だった



30: 萱取山◆n8a8vmnvfE 2015/02/14(土)19:59:09 ID:ZRo
母の実家の地域には、ある「呪い」が伝わっている
それはひどい呪いで、かけた人は自分自身が呪いのために必ず死んでしまうのだが
呪いを受けた相手が死ぬかどうかは半々らしい
自分の命はなくなるのに効果は半々とは、なんとも分の悪い呪いだな、と当時は思った

自分が小さいころ、母から、むかし近くに住む女性がその呪いをやった、と聞いた
その人はいつも暴力をふるう自分の夫を憎み、その呪いを行って死んだという
その女性の死後、呪いの道具が見つかったけど、その後、呪いが効いて夫が
死んだかどうかは不明である

今にして思えば呪いとはこんななのものしれない
リスクもなく確実に効く呪いなんてあるわけないのだ
自分は死んでもいい、相手を殺せるならわずかな確率でもすがりたい
そんな憎しみと絶望を持った人だけが呪いなどに手を出す
だから呪いとは本来ハイリスクで分の悪いものなのかもしれない

母は自分にはその呪いの具体的な方法を絶対に教えてくれなかった
しかし、妹は教えてもらったらしい
一度、妹にうまいこと言ってその方法を聞き出そうとしたが
きゅうりの中をくりぬいて皮だけにしてその中に刃物を入れて、まで聞いたのだが
妹の言い方が分かりにくくて何度も聞いてるうちに母に見つかってしまった
女性がどうしても絶望した時、最後にすがるための呪いなのかもしれない

  【了】

32: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)20:05:50 ID:nGv
「山が光る」  吉行◆mHqJ7otKZM

怖いって言うより不思議な体験。
家族で遠出して帰る途中、高速道路を走っていたら山が光って見えた。
もう夕暮れ時で、山の光は眩しいくらいだったのに、弟に「山光ってない?」と聞いても「何言っとん光っとらんし」と返されるだけ。

あんなに光ってるのに何で見えないのと思いながら山に目線を戻すと、もう光っていなかった。
あれって何だったのかな。
【終】

34: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)20:08:09 ID:Vve
葛◆5fF4aBHyEsさん
夜道-1/2

冬にしては珍しく、篠つくような雨が降りしきる夜更けだった
自分は、国道とは名ばかりの、『酷い道』と書いて酷道と読むような山道を走っていた
深夜0時。車はエアコンをガンガン入れているのに妙に肌寒い。外が雪でないのが不思議なくらいだ

片側一車線あるか無いかというような道を走っていると、やがて工事現場の信号が見えた
どうやら、片側交互通行になっているらしい。前に1台、黒い軽自動車が信号で停止している
リアガラスは黒いフルスモーク。車高低+見るからに威嚇しているようなリアウィング。あまりお近づきになりたいタイプではない

【落石防止のための、防護柵を設置しています】

見るともなしに看板を見ていると、やがて信号が青に変わる。……が、前の車はぴくりとも動かない
(おーい、信号変わってますよー)
心の中で呟くが、やっぱり前の車は待てど暮らせど動かない
(クラクション鳴らした方がいいのかなあ……もし、運転中に倒れてるとかだったらどうしよう……)
悩んだ末に車を発進させ、横を通り過ぎながら運転席を覗き込む……が、暗いせいか人の姿が見えづらい
(やっぱり、倒れてるとかなんだろうか?)
戻って中を見た方がいいのだろうか。でも、女一人でこんな深夜に車外に出るのは抵抗がある
と、後ろの車が動き始めた
(良かった。ちょっと居眠りしてたとかだけなのかな。……それはそれで危ないけど)
と安堵したのも束の間、
(……近すぎ……)
追い越したから怒ったのだろうか。後ろの車は見る間に距離を詰めてくる
バックミラーを覗くと、近過ぎてリアガラスのすぐ向こうにフロントガラスがぴったりくっついているかのようだ

35: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)20:09:02 ID:Vve
-2/2
自慢ではないが、こちとらスピード出すのが苦手な超ヘタレゴールド免許だ
幅寄せされても40km出すのがせいぜいで、一瞬、離合用のスペースが目に止まるが、
(追い越させたいけど……こんな行動する人なら、何するか解らないな……)
警察に電話しようか。そう思ってちらりと携帯を見る……が、圏外
とにかく人里まで。山道を抜けてからなら後は何とでもなる。そう考えながら、山道を下る
やがて道が急に広くなった。峠を降りて、人里が近くなったからだ
100mほどの直線の後、急カーブになる。何度か通ったことがあるので、道は覚えている
これだけ車間距離を詰められたらブレーキを踏んだ弾みに追突されそうで怖かったが、かといってスピードを出したままで曲がれるとは思えない
カーブの手前で減速した瞬間、
「!?」
ふっ……と後ろの車がかき消えた。というより、何かが追い抜いていったような感触。車の中の空気がふわりと揺れる
追い抜きざま、小さく「チッ」と男の声で舌打ちが聞こえた気がした
次の瞬間には、車の姿は消えていた
(事故って視界から消えた?……ってわけでも無いな。ガードレールにぶつかった音がしなかった)
一応警察に通報すべきだろうか。でももし万が一、本当に事故だったら…?
恐る恐る窓を開けた自分の目の前には、一部だけ不自然に新しいガードレールと、枯れた花束が雨に打たれていた



37: 林檎小娘◆vCMeD/yt12 2015/02/14(土)20:13:54 ID:TP0
「屋根裏部屋からの音」

実は私、今日午前中だけ部活があったんです。
だけど、風邪で寝込んでしまって、休みました。
丁度お昼を少し過ぎた頃、ですかね。
天井から、物音がしたんですよ。

私の部屋は三階の、真ん中。
そして、唯一屋根裏部屋に繋がるところが一箇所ありまして。
ドン、ドン、って。音がするんです。
それも、今日だけのことじゃなくて。

いつも天井から物音がするのは、大抵午前午後限らず2時半くらいから3時まで定期的になりだします。
いつもは夜更かしの際に音がするんですが、今回は違いました。
私が寝込んだから、聞いてしまったんでしょうけれど。
いつもの通り、ドンドンと音がします。
だけど本当にいつもどおりで、3時40分頃をすぎると、何の音もしなくなりました。
それに、頭も朦朧としていたので眠りにつこうとしていて・・・。
すぐに、寝ました。
いつも私だけに届くあの音、あれは一体なんなのでしょうか? 来年の今日までには解き明かしたいです。



【終】

39: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)20:23:54 ID:Vve
雷鳥一号◆jgxp0RiZOM
【吸い殻】

山仲間の話。

夏山で単独行をしていた時のことだ。
朝、食事などの支度を済ませてから、テントを畳もうと外に出た。
すると異臭が鼻をついた。山の中ではまず嗅がないはずの臭い。

きつい煙草の臭いが、テントの外に立ち込めていた。

彼は煙草を吸わない。
首を傾げながら周囲を確認すると、テントを囲むように多量の吸い殻が落ちている。
昨日の夕方ここにテントを張った時には、間違いなくこんな物は無かった。
その内一つは、まだ微かに紫煙を漂わせていた。

どうにも気味が悪く、出来るだけ素早くそこから撤収したという。
その後の山行では、もうそのようなことは起こらなかったそうだ。


41: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)20:26:12 ID:Vve
箱?◆1VqmHx3hiI
1/2
実体験だから怖いかどうか微妙で、特にオチもないけどせっかくの機会だから投稿する。

僕の実家の天井裏には絶対に開けてはいけない箱がある。
開けてはいけない箱の形状はいたってシンプルだ。
10㎝四方の漆箱、埃をかぶり装飾は何もない。蓋を固定するために十字に絞められた紐はほぼ朽ちかけていてぼろぼろ。
実はこの間、双子の兄と箱を開けてみたのだが怖いことは何も起こらなかった。
なんだ何もないのかよと思い祖父に箱を開けたことを報告すると、天井裏を勝手にいじるなと叱られたあとで昔話をされた。
長くなると思うからここらで一旦切る。

42: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)20:26:49 ID:Vve
続き。
祖父の話によれば、僕らがまだ幼い頃3つ上の従兄弟が箱を開けた後、「黒くて怖い地を這う女」の幻覚幻聴に苦しめられながらじわじわと弱っていき、亡くなった。
死因はよく分からず、乳幼児によくある突然死的な扱いだったらしい。
箱はすぐ神社に持っていきお焚きあげしてもらおうとしたが、どうしたわけか燃えずに焼け残り、なおかつ箱を燃やそうとした神社で不審火が多発したことから我が家に戻された。
それ以降、何度か誤って箱を開けてしまうことがあったが、特に何も起こらない。
だから、とりあえず大事をとり「開けてはいけない」ことにして天井裏に保管しているのだそうだ。

正直この昔話は怖くなかったのだが、そういえば小さい頃に男の子が真っ黒な女の人につれられて我が家の廊下を歩いている夢を見て泣いてたな~って思い出して、ちょっと怖くなった。
ちなみにこの夢は兄貴も見ていたらしい。
【了】

44: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)20:33:02 ID:Vve
第15話 葛◆5fF4aBHyEsさん
鞄-1/2

その女性が店内に入って来たのは、私がちょうど応援でレジに入って居た時だった
「いらっしゃいませー」
レジに並んだお客さんの商品をポスレジで読み取りながら声を掛けながらふと顔を上げた瞬間、何故か私は手を止め、ぼんやりと彼女を目で追ってしまった
年齢は30代くらいだろうか。明るめの茶髪に動きやすそうな服装。肩から淡いピンクのショルダーバッグを提げている
「あ、あの……?」
「あっ、す、すみません」
レジに並んだお客さんから声を掛けられ、慌てて我に返る

急いでレジを通しながら、心は「何であんなに気になったんだろう」という気持ちでいっぱいだった
気になったというより「惹かれる」感じか。訳もなくつい目で追ってしまう、あの感じ
しばらくしてお客さんが途切れたので、レジから離れて商品棚の整頓に向かうと、さっきの女性が買い物カゴを手に店内を回っていた
見れば見るほど「何故気になるのか解らない」。にも関わらず、気付けば視線はそちらを向いてしまう
彼女はこちらの様子に気付くことなく、棚を移動していった
(うーん……)
「……どうかした?」
首を傾げる私に、店長が声を掛けてくる
他の店員たちも私の様子が気になっていたようで、「万引きとか?」と聞いてくる
「万引きではないんだけど……」
聞かれたところで、自分自身でもよく解っていないのだから、答えられるわけがない
その女性は一通り店内を回ってレジへ向かい、精算する
そして女性が店外へ出ようとした瞬間、けたたましく警報器が鳴り始めた。未精算の商品が通過すると鳴るアラームだ
女性は一瞬顔を引きつらせたが、次の瞬間には身を翻して駆け出していた

45: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)20:34:31 ID:Vve
2/2

「すみません、お待ちくださいお客様!」
店員に腕を掴まれた女性は、顔を真っ赤にして声を張り上げる
「私は盗ってない!」
「それを確認致しますので奥に……」
押し問答の末、女性は渋々奥へ向かった
……器械の誤検知の場合、お客さんは戸惑ったり、きょとんとされていることが多い
逃げようとしたということは「そういうことなのかな」と誰しも思っていたのだが……

レジ袋の中の商品に、未精算のものは見当たらない。ショルダーバッグの中にも未精算の商品は無かった
どうやら「盗っていない」というのは本当だったようだ。……が、ショルダーバッグから女性のものとは違う免許証や保険証が入った財布が出て来て、別の意味で問題になった

結局彼女は警察に引き渡されて一件落着したのだが、後日談が一つある

財布から、女性のものとは違う身分証が出てきた時、何気なくそれを見た私は、
(I原……これ、小学校の時に転校していったI原ちゃんと同じ名前だなあ……)
一番仲良しで、転校で離れ離れになることが我慢できずに「秘密基地に住んで二人暮らししてやる!」とプチ家出をし、大騒ぎになった友達だが、時が経つに連れて疎遠になった
免許証の写真を見ても、昔の面影があるような無いようなといった感じで、勿論同姓同名の別人だろうと思っていたら
後日、財布を見つけてくれたお礼を述べに、と現れた彼女は、やっぱり幼なじみのI原だった

未だにあの女性が気になったことや、警報器が誤検知で鳴った理由は不明だが、あれはきっとI原の財布が発したSOSだったんじゃないかと思っている



47: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)20:37:22 ID:Vve
あまり画面ばかりを見つめていては、妖しのものどもにつけこまれやすくなるのかもしれませんね
この辺りで一息入れてみましょうか………

15分後に再開いたします

48: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)20:44:56 ID:Vve
第16話 雷鳥一号◆jgxp0RiZOM
タイトル【砂浜にて】

友人の話。

海岸の砂浜を歩いていると、行く手からズリズリという音が聞こえてきた。
視線を上げると、西瓜ほどもある黒い毛玉が、こちらに這いずってくる。
「何だろう、海草の生えた大っきなヤドカリかいな?」
そんなことを考えながら呆ッと見ていると、そいつがくるりと上を向いた。

目と目が合った。
砂上を這いずっていたのは、男の生首だった。

サッと目を逸らし、見ていない振りをした。
ズリズリと何かが這う音は止まることなく、彼のすぐ横を通り抜けていく。
音が聞こえなくなってから、恐る恐る背後を見てみた。

何かを引き摺ったような痕だけが、岩の向こうに続いていた。
確かめる勇気など無くて、脱兎のようにそこから逃げ出したそうだ。


50: 宵待草◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)20:51:50 ID:nGv
第17話 『泣き女』 宵待草◆zGmkUMDv/mqt

Sから聞いた話。

Sの友人が亡くなった(以下友人Aとする)。病気がわかってからあっという間だったらしい。
同級生であるSに知らせが届いた時にはもう葬儀は終わっていたそうだ。
Aは家族葬だったので、Sや他の同級生たちは弔辞を送ることもできなかった。

そんなことでもやもやしつつ、Sは大学時代の友人たちと連絡を取り合った。
とくにAと仲が良かったBはショックを受けているようだった。
とりあえずSはBを酒の席で慰めることにした。

するとBが、ぽつりぽつりと、こんなことを話し始めた。

ある夜、寝ていると廊下で絶叫のような大きな声がして目が覚めた。
ドアを開けてみると見知らぬ女が座り込んで手で顔を覆って泣いている。
その日は眠れなかった。

「その後すぐだよ。Aが亡くなったと知ったのは…」
でもそれが初めてのことじゃないんだ、と彼は続けた。

以前も夜中に女の泣き声で目が覚めたことがあった。
「その時はしばらくして、事故で多くの人が亡くなったんだ…」


「今度その女の泣き声が聞こえたら、次に死ぬのは俺かもしれない…」


【了】

52: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)20:54:06 ID:Vve
第18話 三好 ◆PYENbZfXGU

(1/2)
ばあちゃんから聞いた話と後日談。
ばあちゃんは中学生の時、ガキどもに虐められていた小さい白蛇を助けたことがあるらしい。
その蛇が神様かなにかだったのかは不明だが、それからというものばあちゃんは命に関わる事故や事件を何度も回避してきた。
例えば、俺が知ってる中で衝撃的だったのが日航機墜落事故の時、係員の勘違いで足止めをくらったためばあちゃんは事故機に乗らずに済み、事故回避できたこと。

この話をするとき、ばあちゃんは決まって最後にこんなことを言っていた。
「最初こそ白蛇のご利益かもしれないと思うと
ありがたかったんだよ。
でもね、年を取るにつれて段々と恐ろしくなってきちゃった」
俺がどうして恐ろしいのか聞いても、ばあちゃんは何も答えてくれなかった。

53: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)20:55:04 ID:Vve
(2/2)
そんなばあちゃんが半年前に亡くなった。
遺品整理を手伝っていた時、俺はばあちゃんの日記を数冊発見しこっそり持ち帰った。
何でそんなことをしたのかは自分でも分からない。何かに突き動かされるようにそうしていたとしか表現できない。
日記は数年前から書きはじめられたもので、日々の些細な出来事から俺が大学に入れて涙が出るほど嬉しかったこと、でも会う機会が少なくなるから寂しいことなどが綴られていた。

でも、亡くなる一年ほど前から日記の内容が激変した。
毎日毎日、大きな白蛇が夢にやって来る。
白蛇は必要以上の加護をやったのだから、死んだ後は白蛇のもとに行かなければならないと言う。
死ぬのが怖い。
そんなことが毎日長々と綴られていた。

ばあちゃんは死後、きちんと天国に行けたのだろうか。それとも白蛇のところにいるのだろうか。
せめてお盆には魂が家に帰ってこれる状態であってほしいと思う。

55: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)21:11:23 ID:nGv
 第19話 葛◆5fF4aBHyEs

  家系-1/2


「私、呪われてるんですよぉ」
突然こんなことを言われたら、普通は「はあ?」と思うだろう
現に自分も「はあ?」と聞き返した
いくら会社の忘年会の席での無礼講とはいえ、彼女の突拍子もない発言に耳を疑った
他の社員は銘々出来上がっているので、下戸の自分に話し掛けたのだろう。他に彼女の話を聞いている者はいない
……というか彼女自身、既に出来上がっている気がする。聞いてもいないのにそんなことを話し始めるあたり、特に
彼女は頬を上気させて、こちらの返答など気にすることなく続けた
「私の家系ね、『地元を離れられない呪い』がかかってるの」
「……はあ。左様(さい)で」
「小学校の修学旅行は、季節外れのインフルエンザに罹って行けなかったの。中学の時は直前で事故に合って……その時に、おばあちゃんが教えてくれたの」
『うちの家系の女は、地元を離れられない』と言われた彼女は、ひどく反発したのだという
「だって、そんなの納得いかないじゃない?だから高校は遠方の、全寮制のトコに行こうと思って、すごい勉強したの。……でも、受験直前にO-157に罹ってさ」
結局地元の高校に進学した彼女だったが、それでも諦めきれず、
「大学こそはと思って勉強頑張ったわ。あ、ちなみに修学旅行は台風で行けなかったんだけどね。で、あちこち受験したんだけど……」
結局、入試に行くことさえ出来なかった、と彼女は言う

56: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)21:12:08 ID:nGv
家系-2/2

かたや人身事故で電車が止まる。かと思えば雪が降る。ひったくりにあって切符と受験票の入った鞄ごと紛失する。受験し直そうとしたら渋滞にはまる
タイミングよく不幸がある。実家に落雷があって、それどころじゃなくなる
台風と言えば、小学校の時のキャンプも台風で流れたっけ。思い出しながら、彼女はそうつけ加えた
……一通り話してスッキリしたのか、やっと言葉の止まった彼女に、
「……でも、今は地元を離れてこっちに来てるんですよね?」
そう問うと、彼女は満面の笑みで頷いた

「だって、『娘を生んだら娘に呪いが移る』って解ったから!今、私は自由なの!」

嬉しそうに
心底楽しそうに答える彼女に絶句する
「……それはつまり、そのために娘さんを生んで、捨てて来たと……?」
「ヤだ、失礼なこと言わないでよ。そりゃ娘は可哀相かもしれないけど、ちゃんとお母さんとおばあちゃんが見てくれてるし。私だって被害者なのよ?」
そうは言いながらも、彼女の表情は『嬉しくて仕方がない』と物語っていた
悪びれず、にこにこと答える彼女に、罪悪感は微塵も見えなかった

あれから数年が経ち、自分はとっくにその会社を辞めていたが、彼女は今でもその会社で働いているらしい

「今、私は自由なの!」……満面の笑みでそう言った彼女を思い出すたび、つくづく実感する
『生きている人間の方がよっぽど怖い』、と



58: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)21:19:07 ID:Vve
10分後、21:28頃から再開いたします

59: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)21:28:02 ID:Vve
第20話 水藤◆IO8bwLPiQ6

父に聞いた話。
当時高校生だった父は下校中、急に後ろから肩を掴まれた。
父がびびりながら振り向くと、血走った目をした30歳前後の女が「何で私の前を歩くのよ!」と叫んで、唖然とする父を超早足で追い抜いていった。
父は女を見送ったあと、その後ろに着いていくのも怖かったため、脇道入って少し遠回りをして帰ることにしたらしい。

脇道に入ってしばらくすると、背後から足音がし始めたそうだ。
人通りの少ない道なのに珍しい。そう思ってちらりと振り返った父は思わず小さな叫び声をあげていた。
父の背中ににピタリとくっつくように、先程の女が立っていたのだ。
女は何かブツブツと呟いていて、とても常人とは思えない様子だったそうだ。
恐怖がピークに達した父は振り向いて女を突き飛ばすとすぐさま踵を返し、全速力で家まで逃げ帰った。

この話でも十分怖いけれど、一番怖いのは俺がこの話と全く同じ体験をしたってこと。
俺の場合は流石に女を突き飛ばす勇気が出ずコンビニに逃げ込み振り向くと、いつの間にか女はいなくなっていたのだが。
背後に張り付いた女は終始「何故前を歩く、お前も突き飛ばすんだろう」って延々と呟いていた。この発言から考えると、恐らく父の遭遇した女と俺の遭遇した女は同一人物である。

だが、もし同一人物であれば、あの女は40年近く姿形を変えずに存在していることになる。
彼女は一体何者だったのだろうか。
【了】

61: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)21:29:55 ID:Vve
第21話 葛◆5fF4aBHyEs
願い事

「『書き込むと願い事が~』とか、『○○と書くと願いが~』とか、みんなよく書けるなあ」
「えっ、何で?」
「だって……なんか怖くない?」
「そう?私は書き込んだけど、ちゃんと叶ったよ」
「そうなの?」
「うん。『彼と付き合えますように』って毎日書いてたら、絶っっっ対無理だと思ってたのに、まさかの異動で一緒になって付き合い始めたもん」
「へぇ……」
「でもさ、ちゃんと付き合い始めたからスレに『ありがとうございました』って書き込んでスレを卒業したのに、次の日彼を怒らせちゃってさ」
「うん」
「これはきっと書き込みを止めたからだと思って、今度は『彼とうまくいきますように』って書き込んだの」
「そしたらどうなったの?」
「その日の夜に彼から電話があって、『ごめんね、仲直りしよう』って♪」
「良かったじゃん」
「うん。…でもさ、書き込みを止めたら、また彼を怒らせちゃうんじゃないかって怖くって。毎日書き込み続けたの。でも……」
「何かあったの?」
「そのうちに、書き込んでるのに仲が悪くなってきて、今度は書き込む回数を1日1回から、2回に増やしたの」
「うん」
「1日に2回が3回になって、4回になって。色々なスレに書き込むようになった」
「……そうなんだ」
「その時になってやっと解ったんだ。こういうスレは、願い事が叶っても書き続けなきゃいけないんだ、って」
「……でもさ、何だかんだ言って、今がうまくいってるならいいんじゃない?結婚して専業主婦になった訳だし」
「そうだね」
「おまじないなんて、頼らない方がいいんだよ、きっと」
「? 何の話?」
「えっ?『何の話?』って……」

「今も書き続けてるんだよ」



63: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)21:36:02 ID:Vve
第22話 雷鳥一号◆jgxp0RiZOM
【盆の海】

知り合いの話。

盆に里帰りしていた時のことだ。
実家の前はすぐ漁港になっており、一歩外に出れば、潮と船の姿が確認できる。
夜、玄関先に縁台を出して祖父と将棋を指していると、沖から波とは別の音が聞こえてきた。

 ぎぃ ぎぃ ぎぃ

櫂を漕ぐ音。幼い頃はよく耳にしていたが、実際に聞くのは久し振りだった。
「へぇ懐かしい、手漕ぎ舟ってまだあるんだねぇ」
そう祖父へ言ったところ、渋い顔でこう返してくる。
「今時に手で漕ぐ舟なんか、どこの家も置いてねぇよ」

祖父はそれ以上何も口に出さない。
局面は祖父に不利であり、それを打開しようと必死な様子だ。
その内、知り合いは奇妙な事に気が付いた。

櫂を漕ぐ音は小さくも大きくも成らず、ずっと聞こえ続けている。
だのに、どこからも近づいてくる舟の姿は見えないのだ。
訝しげに暗い海を見やる彼に向かって、祖父は言葉を掛けた。
「盆の夜に海をまじまじ見るもんじゃねぇ。連れてかれるぞ」

彼はその忠告に従い、海を見るのを止めた。
その後も将棋を指している間中、沖合から手漕ぎの音が聞こえていたという。

65: もふ太郎◆YAOzh1h34wV4 2015/02/14(土)21:37:38 ID:ngi
第23話『だるまさんがころんだ』

とある地方都市でのことだ。
K町にかなり勾配のある坂があるのだけれども、そこでちょっとした噂話が広がったことがある。
夕暮れ時になるとその坂の下に、たまに達磨が置かれていることがあるんだそうな。
それに気が付くのは、必ずその道を登ろうとしていて、たった一人でいる時。
ぽつんと道の真ん中に置かれている真っ赤な達磨はどこか寂し気で、ついつい振り返って見てしまう。
しかし、決して振り返ってはならない。
登りきるまでに3回振り返ると呪われる。
そんな、子供だましの他愛もない噂話だった。
ある事が起きるまでは。

その日、ある青年が夕方に坂の下で達磨が置いてあるのを見つけたそうだ。
青年は地元の人間で、最近流行り始めたその噂を知っていた。
なので、本当に置いてあるのかと驚いたがすぐに馬鹿馬鹿しい気持ちになった。
だもんで、無視してそのまま坂を登っていったのだけれど、なぜか無性に後ろが気になって仕方がない。

視線。
背後から見られている感じがする。
つい、振り返る。
誰も居ない。達磨があるだけ。
再び前を向いて歩きだすとやはり視線を感じるが、振り返ると達磨しかない。
そういえば、もう一回振り返ると呪われるんだっけ。
そこで青年はちょっとした悪戯を思いついた。
このまま後ろ向きで登ったらどうなるんだろう。
青年は達磨を見つめながら、後ろ向きでそろそろと坂を登りだした。
しばらくして坂の途中辺りに差し掛かったころ。
何も起きなくて退屈になった青年が普通に歩こうかと思い始めた時、あることに気が付いた。
距離が、縮まっていない?
坂を登りだして十数メートルは登っている。なのに、目線に入る達磨の大きさは、最初に振り返った時のままだ。これだけ離れれば十円

玉くらいの大きさに見えていいはずだ。

……違う。大きくなっている?
3メートル程の道幅の、半分くらいを達磨が占領していた。

66: もふ太郎◆YAOzh1h34wV4 2015/02/14(土)21:37:53 ID:ngi
まさか、まさか。
速足で、でも視線を外すことが出来ずに後ろ向きのまま登る。
登る。
変わらない。
登る。
変わらない。
いつのまにか達磨の幅は道幅いっぱいに広がり、高さも角にあった電信柱と同じくらいになっていた。
そして。
達磨が動いた。

ずうぅぅぅん。
達磨がジャンプして坂を登って来るのである。地面に落ちる度鈍く地響きがする。
青年はそれから逃れようと必死で坂を登ったが、後ろ向きというハンディのままではそうそう早くは進めない。
すぐに追いつかれてしまった。
気が付けば。
達磨は青年の目と鼻の先まで追いついていた。既に巨大、といっても差支えない程の大きさにまで膨れ上がっている。
そして。
達磨が青年の目の前でジャンプしたかと思うと、そのまま青年の頭上へと落ちて来た。
「ああああああああぁぁぁァァァァアアアアアアアアア!!!!」
巨大な達磨に押しつぶされながら、青年は悲鳴とうめき声の混じり合った声を上げ、気を失った。

青年が再び目を覚ました時には夜になっていた。辺りは暗く、電燈と周りの家々の明かりだけがぽつぽつと点っている。
しかし、それにしては目の前が暗いことに青年は気が付いた。
やがて思い知る。辺りが暗いのではなく、自分の目がおかしいのだと。
青年の左目は視力を失っていたのだ。ちょうど、達磨の目が片目しかないように。
その達磨がなんなのかは、誰にもわからない。
もしもあなたが坂道で達磨がぽつんと置かれているところを目にしたときは、決して振り返ってはならない。
青年のように、大事な片目を失いたくなければ。
でも、あなたがそれでも構わないというのであれば、ぜひ振り返ってみて教えてほしい。
三度振り返ったら、一体何が起きるのかを……。

【終】

68: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)21:47:25 ID:Vve
第24話代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo

幼い頃、白くぼんやりと光る球体をよく見ていた。球体は大抵、私が1人で夕暮れ時の町を眺める時現れた。
目撃する頻度はまちまちで、1週間に1度見える時期もあれば、数ヶ月間姿を見せない時期もあった。
球体は、どこかの家の窓から飛び出し、暮れつつある空のどこかに消えていくのが常であった。
その光景はとても幻想的で、夕暮れ時の町を眺めることは幼い私にとって楽しみな時間だった。

ある時、祖父の家の庭で遊んでいると、出掛けており留守だった祖父の部屋から、球体が飛び出すのを目撃した。
私は非常に興奮し、急いで家に入ると祖母の元へ走りよって球体が祖父の部屋から飛び出したことを報告した。
すると祖母は悲しそうな顔をして、球体のことは祖父に絶対話さないよう私を諭した。
私には何故球体のことを祖父に話してはいけないのか全く検討がつかなかったが、祖母の言いつけを守り祖父には一切この話をしなかった。

球体をみた数日後、祖父が亡くなった。就寝中に心臓が止まり、そのまま息を引き取ったらしい。そして祖父の死以降、私は光る球体を見なくなった。
あの球体は何だったのか、今となっては分からない。祖母は10年前に亡くなった。結局球体のことは聞けずしまいのままである。


70: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)21:50:18 ID:Vve
第25話 雷鳥一号◆jgxp0RiZOM
【ピース】

(1/2)
サークル仲間の話。

幾つかの仲が良いサークルが集まって、キャンプに行くことにした。
キャンプ自体は大成功で、とても楽しいものだったらしい。
帰ってきてから、その時の記念写真を配っていると、あるサークルの女性が
頻りに首を傾げ始めた。

「ねぇ、この人、あの時いたっけ?」
そう言って、写真に写った一人を指で示す。

「……誰だこの人? 見たこと無いぞ」
「いやこの写真って最後の集合写真だろ。部外者なんて誰も居やしないよ」
「でも実際に写っているし」
「これ撮った時、こんな人いなかったぜ。っていうか俺の隣じゃん!」
すわ心霊写真かと、その場では軽く騒ぎになったそうだ。

「……ってことがあってさ。これがその問題の写真なんだけど」
そう言って、彼は一枚の写真を私の前に差し出した。
仲間達が皆ニカッと笑って写っている、良い集合写真だ。
「どこにも幽霊みたいな人は見えないんだけど?」
私がそう疑問を問えば、彼は前列真ん中にいる一人の男性を指差した。
「この人なんだ。こんな人、この時この場所には絶対にいなかった」

71: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)21:51:40 ID:Vve
(2/2)
座の中心にしゃがんで座り、元気良くピースサインを作っている男性。
周りの誰にも負けないほどに、満面の笑みを浮かべている。
ただ服装や装備が、周りに比べてかなり古くさい。

「……これ本当に心霊写真なの?
 こっちのこと担ごうとしてるんじゃないの?」と言う私に、
「……皆が皆、そういう反応なんだよなぁ。
 でも仕方ないよなぁ、区別つかないもんなぁ……」
そう苦笑いをする彼だった。

これから二年後に、まったく別の友人から、似たような話を聞かされた。
同じように、その場にいなかった見覚えの無い人物が、集合写真に写り込んで
いたという。

試しに写真を見せてもらうと、やはり件の男性であった。
同じ服装でしゃがみ込み、やはりピースを突き出して爽やかに笑っていた。
白い歯が眩しい。

私が二年前の話を聞かせると、友人はひどく驚いた。
「えっ、これって霊なの?」
「いや、本当にそうなのかはわからないんだけど、この顔だったよ」
そしてやはり、こんな間抜けな会話をすることになったのだった。


73: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)21:53:30 ID:Vve
15分ほど休憩を入れます。
再開は22:08頃を予定しております。

74: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)22:08:33 ID:Vve
第26話 葛◆5fF4aBHyEs


-1/3
久しぶりに幼なじみと再会した
彼とはお互いに「隣家まで1kmとか普通」「遊びに行ける距離に同い年の子が居ない」という限界集落で育ったので、小学校の頃はよく遊んでいた
中学の時はお互いそこまで親しいわけでなく、別々の高校に進んでからはぱったりと顔を合わさなくなった
通学に不便だからと高校近くのアパートで一人暮らしを始め、風の噂に「悪い仲間に入って高校を中退した」と聞いていたのだが……
久しぶりに会った彼は、見違えるほど爽やかな好青年になっていた
立ち話も何だし、自分もちょうど時間があったので、二人して喫茶店に入る
「変わんねーな、お前」
「あんたは変わったねー。てか、暴走族に入って高校中退したって聞いてたんだけど」
単刀直入に話題を振ると、彼は困ったような顔で頷いた
「でも、もうやめたんだけどね」
「何かあったの?」
水を向けると、彼は言いにくそうに口を開いた
「DQN話になるから、不快になったらごめんな。……オレ、高校やめてから仲間と一緒に毎日のように暴走行為を繰り返してたんだ」
ちょっと口には出せないくらい荒い運転で、他の人の迷惑なんて一切考えなかったらしい

75: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)22:09:21 ID:Vve
花-2/3

「……で、ある日事故った」
スリップしてガードレールと接触し、倒れ込んだそうだ
幸いにも無傷だったが、無傷だからこそ余計に恥ずかしかったらしい
「仲間は笑ってるし、むしゃくしゃしてガードレールの支柱を蹴飛ばしたんだ」
そうしたら、支柱の向こうに置かれていた、花束を挿した瓶が倒れたそうだ
最初は「悪いことをしてしまった」と後悔した彼だったが、仲間たちに笑われてついカッとなってしまったらしい
「その花束をグシャグシャに踏み潰したんだ」
「うわぁ……」
正直に引いてしまう自分に、彼も申し訳なさそうな表情を浮かべていた
「……その時は『悪いことするオレカッケー!』ってくらいの気持ちだったんだけど、その夜から妙な夢を見始めて……」
それは、ランドセルをかるった小学校中学年くらいの女の子の夢
「自分は交差点の近くに居て。女の子がこっちに駆けて来て。『おはようございます!』って言って手を振りながら通り過ぎていって……」
そこまで言ってから一旦言葉を切り、大きく息を吐いた

76: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)22:10:09 ID:Vve
花-3/3


「オレは何でか、『そっちに行っちゃ危ない』って知ってるんだよ。でも、そう言ってあげたいのに声が出なくて動けなくて……」
ほんの数分間の出来事。それを繰り返し繰り返し、何度も夢に見たのだという
「寝付けなくなってかなり参って、そうなってからやっと反省して、花束を持ってお参りに行った」
その日から、夢は見なくなったそうだ
「……それ、女の子が化けて出てたってこと?」
「うーん、どうなんだろ。どっちかというと女の子の親とか、『通学見守り隊』のシニアの人とかだと思う。見ていたのに助けられなかった後悔が強かったから」
「……そっか」
仲間とは離れてしばらく経つが、今でも女の子の月命日にはお参りを欠かさないらしい
そして今は土建屋に就職し、元請けに引き抜かれた、と彼は話してくれた
「それにしても、良かった。お前と久しぶりに会えて。オレ、今度から東北行くんだ」
現場主任が復興の応援に行くことになったのだが、その時に彼も誘ってくれたのだと言う
「しばらく帰ってこないと思うけどさ、親からは勘当されてるし、学は無いけど体力だけなら無駄に有り余ってるし、出来ることを頑張ってくるよ」
そのために、女の子のところにお参りして「しばらく来れません」と手を合わせて来た帰りに、自分とバッタリ出会ったらしい
「良かったらさ、花束代は送るから、代わりにお参りしてくれないか。毎月じゃなくて、行ける時で構わないから」

そう言って、彼は発って行った。あれから2年が経つが、どうやら元気でやっているようだ


78: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)22:14:25 ID:Vve
第27話 雷鳥一号◆jgxp0RiZOM
【ネズミ捕り】

知り合いの話。

家の天井裏から、チューチューと鼠の声が聞こえた。
駆除しようと思い、倉庫にあった金物製の古いネズミ捕り罠を仕掛けたという。
数日様子をうかがっていたが、何かが罠に掛かった気配は無い。
押入内の天袋を上げて状態を確認してみた。

ネズミ捕りは、何か大きな物が上に乗ったかのように、ペチャンコに潰れていた。

天井裏は狭く、ネズミ捕りを潰せる程の物体など何処にも見えない。
というか罠を踏み潰したら、それを置いていた薄い天井板は確実に破れている筈だ。

彼は罠の残骸を回収すると、それきり天井裏のことは無視することにしたそうだ。
鼠の声はいつの間にか聞こえなくなり、特に問題も起こっていないのだという。

80: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/14(土)22:26:33 ID:Vve
第28話 南 ◆8pXPjdBnlY

GWだから実家に帰省していた。実家は昨年春休みに引っ越してきた所で、築2年くらいの一軒家。前の家に比べてちょっと小さいことを除けばそこそこ過ごしやすい家だと、引っ越し作業を手伝っている時は思っていた。

引っ越し作業以来、初めて足を踏み入れた実家。引っ越し直後は雑然としていたが、随分ときれいになったものだ。
私に宛がわれたのは1階の和室。TVもPS3も完備された快適空間。他の家族は2階で寝るから、真夜中までゲームをしていても気兼ねせずにすむ。良いことづくめだとほくほくしていた。

帰省初日。風呂上がりに廊下をぷらぷらしていると、和室から物音がした。ペットの犬が侵入しているのか思い、数ヵ月ぶりにもふってやろうと襖を開けたが犬はいなかった。
気のせいかと襖を閉め、リビングに向かい妹お手製チーズケーキを食べてまっったりと過ごした。両親と話をしていたら、いつの間にか深夜になっており、そろそろ寝るかということで解散。和室に行きゲームをするでもなく大人しく寝た。

2日目、家に私以外誰もいない状況ができた。ゲームをしたり読書をしたりで暇潰ししていたら、急に強烈な眠気に襲われた。
取り敢えず枕とタオルケットを出し、寝転がった。次の瞬間、金縛りに。
背筋が粟立つ感覚と、何かの視線を感じたがすぐに意識が遠退いて、起きたらもう夕方だった。

そして3日目。一日中家族と外に出ていて、ついさっき帰宅。そっと和室を覗くと、本棚の本の並びが少し変わっていた。気味悪く思い、泥棒に入られていたらいけないし家族に報告しとこうと和室に背を向けた。
すると背後からゴトゴトという物音とともに、誰かの話し声が聞こえた。
もう本気で怯えて親に相談したが、たぶん気のせいだろうと言われた。


83: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)22:40:25 ID:nGv
第29話  葛◆5fF4aBHyEs

傘-1/2

駅前で偶然、顔見知りと出会った
別段親しいわけでもない、『知り合いの知り合い』といった感じなのだけれど、何かとよく顔を合わせる彼女
たまたま彼女も自分と同じように、待ち合わせまでかなり時間があるということで、どちらが言い出すともなく駅前の喫茶店で時間を潰すことになった
コーヒーを飲みながら他愛もない話をしていると、ぽつぽつと雨が降り始めた
喫茶店に入る頃から今にも降り出しそうな曇り空だったので、すぐにザアァ……と本降りになる
雨はしばらく止みそうにない
次々と落ちてくる雨粒を見るともなしに見ていると、やがて時間になり、
「そろそろ時間だから……」と席を立ち、会計を済ませる
二人、連れ立って店を出ると、彼女はひょいと店の前に置かれた傘立てから一本の黒い傘を抜いた
驚いたのはこっちだ。いやいや、アナタ店に入る時傘持ってなかったやん
それを指摘すると、彼女はあっけらかんと言い放つ
「だって、雨降ってるし。濡れるの嫌じゃん。」
「いやいやいや、アナタがその傘取っちゃったら、傘の本来の持ち主が濡れて歩かなきゃならなくなるじゃない」
彼女の返答に言い様の無い徒労感を覚えるが、彼女もこちらの言い分にムッとしたようだ
「いいじゃん、この傘埃ついてるし。しばらく誰も使ってないみたいだから、私が使って上げるのよ」
いやいやいやいや、そういう問題じゃないだろう
……そう言い掛けたが、ふと気付く
傘は確かに彼女の言う通り、埃っぽかった
この雨の中さしてきたとはとても思えない。というより、2~3ヶ月と言わず、2~3年放置されたと言われても可笑しくない

84: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)22:41:05 ID:nGv
傘-2/2

(これってもしかして、『誰も使ってない』んじゃなくて、『誰もが避けて通る一品』なんじゃ……)
それに思い至った時には既に彼女は
「じゃ、私、待ち合わせあるから」
『これ以上の話は不要』とばかりにさっさと身を翻していた
手にはしっかりとあの黒い傘をさして

次に彼女を見かけたのは、2ヶ月後だった
……この2ヶ月間で何があったのだろうか
痩せこけ、目元には『化粧でもこうはいくまい』と思えるほど濃いクマが出来、目は落ち窪んでいるにも関わらず目だけはギラギラと光っていた
そして、手にはしっかりとあの黒い傘を抱いていた
彼女はこちらに気付くと、ニヤリと笑う
「……アンタも私のこと『可笑しい』って言うの……でもダメよ、この傘はあげないわぁ……」
彼女はそれだけ言うと、雑踏の中をフラフラよたつきながら去っていった

最後に彼女を見たのは、黒い縁取りの白黒の写真の中でだった
奇行を繰り返し、誰も近づかなくなった彼女は、浴室で倒れていたのだという
シャワーを出しっぱなしにし、黒い傘を広げた下で

だがそれ以降、黒い傘を見た者は誰も居ない
晴れているにも関わらず室内でさす程彼女が気に入っていた傘なら、一緒に棺に入れてやろうとしたのに、ほんの少し目を離したうちに、傘は見当たらなくなったのだという

今でもあの傘は、どこかで引き抜かれるのをひっそりと待っているのかもしれない……



86: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)22:44:34 ID:nGv
  第30話 ≪小人≫  林檎◆vCMeD/yt1 



私が夜、歯を磨こうと洗面所へ向かったときのこと。

その日は丁度月明かりも出ていて、電気を点けるほど暗くはなかったので電気をつけずに歯ブラシを戸棚から取り出そうと扉を開けたところ・・・。

おじさん小人が石鹸の上に座っていた。

目が合って、思わず「うわっ」と声を出すと、おじさん小人はペコリとお辞儀をしてどこかへ消えていってしまいました。

彼が何をしていたのか、どうしてそこにいたのか、考えてみてもわからないままです。。。


88: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)22:56:54 ID:nGv
第31話 『幽霊デパート』 宵待草◆zGmkUMDv/mqt


駅に直結している便利な土地なのになぜか何度も入るデパートが変わってしまう…
そんな所ってありませんか。

これは私の地元の話です。
そこは新しくて綺麗な建物で大手の百貨店が入ったのですが、すぐに撤退したんですよね。
次に入った所もすぐに出て行ってしまいました。
その後ちょうど、リニューアルオープンをした頃だったと思います。

「出る」という噂が立ったんです。

従業員の人達が見たというんです。
私が聞いたのは非常階段の話と地下駐車場の話でした。

特に怖いのは地下駐車場なんだそうです。
昼でも暗くてじめじめした所なんですが、そこにゆらゆらと、白い人影のようなものが漂っていることがあるらしくて。
日によってはおびただしい数のそれが、ゴーッと音を立てて、
デパートとつながっている入り口から次々と出ていくんだそうです。


元々は墓地だった場所にデパートを建てたからじゃないかと思っています…。


【了】

90: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)23:05:57 ID:nGv
第32話  葛◆5fF4aBHyEs

鏡-1/2

春。学年が3年に上がった時、同じクラスになった同級生の中に、1年の時も同じクラスだったエリちゃん(仮名)が居た
といっても自分は最初、それが『エリちゃん』だとは気が付かなかったのだけれど
1年の時のエリちゃんは、黒髪を二つに束ね、泣きぼくろが印象的な眼鏡を掛けた大人しい女の子で
人見知りが激しいのか、話しかけるとドギマギする小動物系の子だった
2年はクラスが別だったからよく知らない
3年になったエリちゃんは、髪は緩くウェーブのかかった濃いめのブラウンになり、眼鏡はコンタクトに代わり、化粧もバッチリの社交的で明るい女の子に変わっていた
実を言えば1年の時、どこのグループにも属さない余り者同士、ペアを組む際には必ずお世話になっていたので、同じクラスと知って密かに「やった!」と思っていたのだけど
……エリちゃんは、2年の時に同じクラスだったというカナミさん(仮名)たちのグループと親しくなっているらしかった
それにしても、雰囲気が一変したからかな?
エリちゃんを見てると、何か違和感がある
毎回、本当に微かな違和感で、言葉には表現できないのだけれど、その違和感は砂のように自分の中に積もっていった

エリちゃんとペアを組むことになったのは、文化祭の時だ
各クラスから2名ずつ、文化祭の実行委員を選出するのだけど、立候補したエリちゃんが、何故か自分を指名してきたのだ

「1年の時は、よくこうして二人でお弁当食べたよね」
打ち合わせをしながら、エリちゃんがお弁当を取り出す
「そうだね」
自分も購買で買ったパンを取り出しながら、拭えない違和感を抱いたままエリちゃんを見る
見た目も性格も変わったけれど、右目のところの泣きぼくろは変わらない。ちょっと照れ臭そうに笑う仕草も、昔のままだ

91: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/14(土)23:06:49 ID:nGv
鏡-2/2

自分でも、何に違和感を覚えているのか解らない
でも、「何かが違う。何かが可笑しい」と確信に近い思いを抱いている
「エリ、ジュース買ってきたよ」
カナミさんが、エリさんにジュースを手渡す
……可笑しいと言えば、カナミさんも様子が可笑しい
3年になるまで同じクラスになったことは無かったが、それでも、同じ学校なのだから、見かけたことはある
もっと派手派手しく、気が強そうな瑞々しい雰囲気だった彼女が、エリちゃんに畏縮してる……?
「ありがとう」
エリちゃんがジュースを受け取ると、カナミさんは妙な笑いを浮かべて「じゃ、じゃあ……」とそそくさと去っていった
エリちゃんがお弁当を開け、箸を右手で持つ
その瞬間、違和感の正体を理解した
「エリちゃん……右利きだったっけ……?」
そうだ。確かにエリちゃんは左利きだった。「左利きって天才が多いらしいよ」……そんな会話をしたはずだ
そうだ。そういえば、エリちゃんの泣きぼくろは左目の方にあったはずだ。「利き手の側なんだね」というやり取りを思い出す
口の中が急速に乾上がるのを感じた
目の前で、こちらの様子など意に介さず、エリちゃんがお弁当を食べている
「……あ……なた、誰……?」
漸くそれだけ言葉を絞り出すと、『エリちゃん』はニヤリと笑った
……それは、かつてのエリちゃんの頃には見なかった笑みだ
「……私は、『なりたい自分』になっただけよ。『自分じゃない、自分』に」
その声は、エリちゃんとは似ても似付かなかった

後で知ったことだが、2年の時、エリちゃんはカナミさんたちのグループに、いじめられていたのだそうだ
その後、何があったのかは知らない
ただハッキリしていることが一つだけある

1年の時、一緒にお弁当を食べたエリちゃんは、もういない



95: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)00:03:29 ID:mJS
第33話 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo
【遺書】

友人の話です。
友人が高校生の頃、同級生の女の子が自殺したそうです。原因は結局不明のまま。受験ストレスで片付けられてしまいました。
するとその子が亡くなった直後から、その子のクラスメート全員に、不幸な出来事が続くようになりました。
重い内容で言うとある者は突然母を亡くし、またある者は兄弟が「子供同士のおふざけ」の最中に後遺症の残る怪我を負う。そんな具合でした。

実は自殺した子、クラスメート全員から空気のように扱われ、それを苦にして自殺したそうです。
なぜそんなことが分かるのかというと、彼女の遺書が友人の靴箱に入れられていたから。
彼女、友人に片想いしていたようなんです。
クラスメートへの恨みが込められた遺書の裏側には、友人への淡い恋心とそれを成就させずに去らなければならないことへの無念、遺書は絶対に公開せず友人に持っておいてほしい旨が綴られていたそうです。
友人は遺書を公開しようと思ったそうですが、彼女の遺志を尊重しその存在を隠しました。

彼女のクラスメートに起こった出来事は遺書の呪詛や恨み言にそう形であったため、怖い話と言えば怖い話なのですが、この話を聞くとどこか切ない気持ちになります。


97: 林檎小娘◆vCMeD/yt12 2015/02/15(日)00:24:36 ID:jTi
第34話目 林檎◆vCMeD/yt1
「お経」1/2

去年、近くの神社で夏祭りがあった日のこと。
男女数名で近くの神社(夏祭りの場所とは別)に肝試しに行ったときのことです。
そこは曰く付きの、そんなに有名ではない小さな…少し寂れた神社でした。
暗くなってきた7時ごろに残った四人で神社の奥まで行こうという話になり、
一人ずつ行くのは気が引けたので「みんなで行こう」、と提案しました。

神社のお賽銭箱の前まで来て、
みんなでお祈り?をして、いざ! と奥に入ろうと向きを変えたとき――。
どこからか、微かにお経が響き始めました。
どこから聞こえているのか、それは一瞬にして理解出来ました。
お賽銭箱のあった社の近く…
奥へと続く道の横に建てられていた小さな小屋。
そこから、微かに人の声のような、
初詣などでよく聞くお経のような声が聞こえていました。

98: 林檎小娘◆vCMeD/yt12 2015/02/15(日)00:25:03 ID:jTi
2/2

「ここって、今、誰も居らんのちゃうん・・・?」
隣に居た友人が口を開きました。
その顔は真っ青だったのを、今でも覚えています。
で、臆病な私がその言葉に本気で怖がって、
私を筆頭に、入口付近まで急いで戻っていきました。

あとから聞いた話ですが、その神社で昔
同じように肝試しをしに来た男性の一人が行方不明になっていたことを知りました。

お経が聞こえていた場所なんですが、
なぜか紙切れが貼ってあったのを妙によく覚えていました。
あれは一体、なんだったのでしょうか。

もしかして、と、私たちが彼の二の舞にならないように
なにかが引き止めてくれたのかもしれません。
そうだったら、嬉しいのですが。
もし、私達が奥まで行っていたら……と考えると、
今度はカメラとか持って奥に挑戦したいところです。
まあ、一人じゃ絶対行きませんが。


【終】

100: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)00:48:47 ID:mJS
第35話 葛◆5fF4aBHyEs
人形-1/3

まだ小学校に上がる前、一時的に親戚の家に預けられていたことがある
その親戚の家は古い日本家屋で、大人になった今から思えば「趣のある」家なのだが、小さい頃は妙に暗いし妙に埃っぽいし妙に湿度が高いし、とにかく怖かった
特に、ガラスケースに入った日本人形が怖かった
何故か、ふと視線を向けると必ず目が合うような印象があって、常に見られているようで気持ちが悪かった

そんなある日、何かの用事で親戚が出掛けることになり、一人で留守番をすることになった
「夕方までには帰ってくるから。おうちの外には出ないようにね」
そう言われて頭を撫でられたのは、確か昼過ぎた辺りだったと思う
ぬいぐるみ、ままごとセット、スケッチブックにクレヨン……一人で遊べるだけの道具はたくさんあった
最初は大人しく落書きして遊んでいたのだが、それも次第に飽きてしまった

『……遊ンデアゲヨウカ……?』
不意に、そんな声が聞こえてきた
不思議に思って見回すと、人形と目が合った
『一緒ニ遊ボウ……?』
退屈していた自分に、その誘いはとても甘美だった
不思議と、怖いとは全く思わなかった。遊んで貰えることが楽しみで、ガラスケースを持ち上げる
と、確かにケースの中に居たハズの人形の姿が、ふっ……と消えた
『コッチ、コッチ』
きょろきょろ見回しながら声の方を向くと、クレヨンの散らばった卓袱台の上に人形が立っていた
ワクワクしながら、そぉっと人形に歩み寄り、掴もうと手を伸ばす。と、またふっと人形の姿が消えた

101: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)00:49:30 ID:mJS
人形-2/3

『コッチ、コッチ』
今度は天井の梁に腰掛けていた
当然手が届くわけはないので、何か無いか探し回り、箒を手に人形の元へ戻る

『コッチ、コッチ』
折角箒を持ってきたのに、人形はいつの間にか座敷の真ん中に移動していた
今度は逃がさないように、と鼻息も荒く飛びかかる自分の前で、また人形が消える

『コッチダヨ』
からかうように楽しげな人形の声。今度は、箪笥の上に立っている

『コッチ、コッチ』
捕まえようとすると、人形が姿を消す。欄間から姿を消した人形を探しながら、いつしか追い掛けっこに夢中になっていた

『コッチダヨ』
廊下に居たはずの人形が、いつの間にか縁側の窓の向こう、庭に出ていた
自分もすぐに鍵を開け、庭に出る
と、人形が数メートル先のツツジの上に現れる

『コッチコッチー』
ツツジに駆け寄った時には既に、人形は玄関の前の石畳の上に居た
その動きの速さに翻弄されながらも、自分も玄関の前に向かう

『コッチ、コッチ』
玄関前から数メートル先に移動した人形を見据え、今度こそ、と息巻いて、人形から目を離さないようにしながら慎重に歩を進める

102: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)00:50:19 ID:mJS
人形-3/3

一歩、二歩……飛びかかれるくらいの距離で足を止め、一気に飛びかかる

その瞬間、ぐいっと力強く後ろから襟を引かれた
びっくりする自分の鼻先を、トラックが掠めていく
……いつの間にか、人形は道路に出ていたのだ
気づかないまま飛びかかっていたら、今のトラックに引かれていたハズだ
「コラッ!!何してんの、危ないやろ!!」
自分の襟首を掴んでいたのは、そこの隣に住んでいるおばさんだった
もしかしたら死んでいたかもしれないことに気が付いて、自分は泣き始めた
人形はトラックに引かれ、バラバラになっていた


それから後は、よく覚えていない
人形とのやりとりをおばさんに話したら、大慌てで親戚が帰ってきて、その日のうちに自分は家に帰された

人形は、既に供養されたらしいと聞いたが、自分は今でもあの人形との出来事を夢に見る

『コッチ、コッチ。コッチダヨ……』



104: 0202◆7fx3VkTePk 2015/02/15(日)00:57:07 ID:v8H
第36話目 0202◆7fx3VkTePk

梅干し

友人の祖母は半分自給自足をしている田舎暮らしの人のため、漬物や干し野菜など、保存食をよく作るそうだ。
けれど一つだけ作らないものがある。それは梅干しだ。
祖母の畑には梅の木があり、毎年それなりに実をつける。それを使って梅酒は作るのに。

「どうしてお婆ちゃんは梅干しだけ作らないんだろ?」
「昔は作っていたのよ」
ある時ふと漏らした友人の疑問に、彼女の母親は複雑な表情で答えた。そうしてその理由を教えてくれた。

「お婆ちゃんの梅干しはとてもおいしかったんだけどね。
私が子供の時に、その年作った梅干しが全部カビちゃったことがあったの。
お婆ちゃんは『ああ、また・・・』って苦しそうな顔してね。
上手なお婆ちゃんが失敗するのも珍しいとは思ったんだけど、
その時は(なんのことだろう?)っていうくらいだったかな。
それから一か月しないうちに近親者が突然亡くなって。
次の年から梅干し作らなくなって。
理由を聞いたら悲しそうな顔して笑うだけ、でもその顔を見た時に、
多分前にも梅干しがカビた時に誰か死んだんだって子供ながらになんとなく理解したわ」

「生ものだし偶然でしょ?」
友人がそう問いかけると、母親は苦笑して答えた。
「二度あることは三度あるなのか、本当に偶然かどうか確かめるのって、結構勇気がいると思うけど?」

【了】

108: 薄荷柚子◆CYOadRFefE 2015/02/15(日)01:04:55 ID:wq1
第37話『夜烏』(1/2)

我が家では「夜烏が鳴くと良くない事が起こる」と言い伝えられている。
夜烏とは読んで字の如く「夜に鳴く烏」の事だが、
不吉の前兆の夜烏は、真夜中に一声だけ鳴くという。

私の伯父は昔、夜烏を聞いた。

夜中にトイレに起きた時、家の中にもかかわらずはっきりと
「カァー…」と聞こえたのだそうだ。
翌朝その話をすると、伯父の祖母が顔色を変えた。
「少しの間、外出は控えなさい」
祖母は真剣そのもので、とにかく外に出るなと言う。
伯父は言い伝えなど信じていなかったし、会社員がそんな理由で休む訳にもいかない。
ただ、幸か不幸か連休初日だった為、休みの間は出かけないという事で祖母に納得してもらった。

何事も無いまま迎えた連休最終日、伯父の学生時代の友人A、Bが遊びに来た。
たまたま近くまで来たので寄ったのだと言う。
暇を持て余していた伯父は大喜びだったが、祖母は良い顔をしない。
「物忌み中に人と会うものじゃないよ」
伯父は祖母の言葉を無視して友人達を招き入れ、夕食を共にし大いに語らった。
上機嫌で二人が帰った数時間後、伯父に電話があった。
先ほどまで一緒にいた友人Bからだ。

「Aが死んだ」

伯父の家を後にし二人で帰る途中、Aは車に飛び込んだのだそうだ。
伯父は突然の訃報に戸惑いながらも、最期に自分に会いに来てくれたんだな…と涙した。
だが、それは違うとBは言う。伯父の所に行こうと言い出したのはBなのだそうだ。
その上自殺ではないとも言う。
その根拠は、AとBは卒業後も頻繁に会っていたのだが、
Aは仕事も家庭も順調で、死ぬほどの悩みがある様には見えなかった事。
そしてAが車に飛び込んだ時の状況だ。

109: 薄荷柚子◆CYOadRFefE 2015/02/15(日)01:07:01 ID:wq1
(2/2)

AとBは駅に向かい、夜道を歩いていた。
会社での失敗談で盛り上がり、二人で大笑いしたそうだ。
それはAが話している時の事。

「そうしたら課長が書類をわs

そのまま車に飛び込んだ。
話の区切りどころか単語の途中で、Aは車に突っ込んで行った。
その変貌ぶりがあまりに唐突で、Aの意志とは思えなかった、とBは語る。
「何か…病気とかの発作だったんじゃないか?」
そう疑問を投げかけても、Aは病気なんかしていなかった、とにかく自殺ではないと主張するB。
伯父は少し落ち着く様に促して、電話を切った。

友人の不可思議な最期。受け入れる事が出来ず呆然としていると、祖母がどうしたのか、と声をかけてきた。
Aの事を聞いた祖母は沈痛な面持ちになり

「厄を受けたんだね」

と呟いた。
伯父は冷水を浴びせられた様な寒気を覚えたと言う。

伯父の聞いた夜烏とAさんの死に、因果関係があったのかは分からない。
ただ、伯父はその後40年近くAさんの供養を欠かしていないのだ。

ちなみに伯父の祖母が亡くなった時には、私の母が夜烏を聞いている。

【了】

111: 花梨◆km01tk49hI 2015/02/15(日)01:12:27 ID:I4J
第38話 花梨◆km01tk49hI
母ちゃん

友人から聞いた話をそのまま書かせていただきます。

俺の母親、中学のとき死んだんだよ。
その後、いつだったか、俺、反抗期になって父親と喧嘩して家を飛び出したんだ。
何にも考えずに家から離れたくて全力で走ってた。
そんで前見てなかったせいで車道に飛び出しそうになったんだけど、その時なんかもやもやした変な物体が目の前を横切ってった。
びっくりして止まったら真ん前をトラックが走っていって呆然としてた。
今思えばあれ母ちゃんだったのかなあ?
【了】

113: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)01:15:03 ID:mJS
第39話 吉行◆mHqJ7otKZM
夏の夜

夏の夜。暑くて寝苦しい。寝ようにも寝れない。
そんな状態で寝返りばかり打っていると、急に全身が動かせなくなった。
これは金縛りか。そう思いどうにか指先だけでも動かそうと躍起になっていると、背筋がぞくっとした。
汗ばんだ首筋に、生温い空気が緩くかかったのだ。
それはまるで人間の吐息を吹き掛けられたように感じられて不快で、自分以外の誰かが後ろにいるようで恐怖も感じた。

金縛りにあったのは体感でも時計でもほんの数分だった。
全身の強ばりがとれ、安心した俺は寝返りを打った。そして後悔した。
目の前に、男の顔が転がっていた。
俺は恐怖のあまり意識を失いそのまま朝を迎えた。
【了】

115: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)01:20:46 ID:mJS
第40話 狐 ◆fmUqUShWkg

116: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)01:21:35 ID:mJS
第40話 狐 ◆fmUqUShWkg
天井

実家の座敷で昼寝をしようと、うとうとしていた時である。
突然天井の方から、ドタドタドタッ!!という人が走り回る音がした。
びっくりして飛び起きる。
誰だ、こんな大層な音を立てているのは。
寝起きの鈍い頭でそこまで考えてから気づいた。
今日は自分以外誰もこの家にはいないのではなかったか。

ふと見上げると、
その天井を走り回ったかのように小さな足跡がついていた。

気が付くと夕方で、どうやら寝てしまっていたらしい。
見上げた天井には足跡など無かった。

あれは夢だったのか、それとも他の何かだったのか。

【終】

118: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)01:24:07 ID:mJS
第41話 葛◆5fF4aBHyEs
光る虫

仕事を終えて、仲の良い同僚と連れ立って駐車場に向かう
「お疲れ様ー」「また明日ね」
互いに手を振って車に乗り込もうとした時、ふと動きを止めた
いつの間に現れたのだろう。同僚の周りを小さな光る虫のようなものが飛び交っている
少なくとも、一緒に駐車場まで歩いて来る時には気付かなかった
(何だろう……?)
飛蚊症というか。似ていると言えば似ているのだけれど……
何故か猛烈に嫌な予感がして、思わず同僚を呼び止めていた
「あのっ、そういやさ、こないだ言ってた本、もう買った?」
「まだだけど……」
面食らったように答える同僚が怪訝そうに眉をひそめるが、深く考える暇もなく矢継ぎ早に自分は次の話題を振る
「あ、そういえば、この間もらったお菓子、超おいしかったよ!あれ、どこで買ったの?」
「袋に書いてあったと思うけど……」
「あ、そ、そうなんだ。あ、そういえば、スーパーの特売日っていつだっけ」
「今日だよ?」
同僚は家庭持ちのため、『早く帰って夕飯を作りたい』というのが見え隠れしている。結局5分近く立ち話をした後、
「ごめん、そろそろ帰るね」
と同僚が切り出した
「う、あの、長話してごめん。……でも、気をつけて!気をつけて帰ってね!」
「うん。じゃ、また明日」
駐車場から出る同僚の車を見ながら、何故かそわそわして落ち着かなかった

晩ご飯を食べ終わった頃、同僚から電話が入った
『ちょうど私が通る5分くらい前に事故があって、すごい渋滞に巻き込まれちゃった』
いつもは20分の道のりが、1時間近くかかったという
ごめんね、と謝って電話を切った

結局、あの光る虫が何だったのかは解らない
あれ以降、同僚の周りでも見ていない



120: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)01:36:14 ID:mJS
第42話 葛◆5fF4aBHyEs
欲-1/2

祖母の姉、つまり大伯母は派手好きな人だった
容姿も、常にブランド物を身につけ、宝塚もかくやという化粧。そのうちラスボスと化してもおかしくない
子供心に「孔雀かよ」とツッコミを入れたくなるほど派手だったし、また金遣いも派手だった
曰く、『引きが強い』のだと言っていた
実際商店街の福引きでは引けば必ず上位に入る、ちょっとしたことでもラッキーを引き当てる
出掛ければ財布を拾って謝礼を貰う。パチンコに行けば元手を10倍にして帰ってくるなんて日常茶飯事だった
でも、祖母やうちの両親……ううん。親戚、近所の人を含め大伯母に関わる人は全て大伯母を敬遠していたように思う
自分も大伯母の事は苦手だった
悪い人では無いと思う。子供の自分でも「コミュニケーションが下手なんだな」と感じる、どこか幼い部分を残した人だった
よくお小遣いをくれたけれど、そのお金は自分の懐に入る前に祖母か母が取り上げ、どこかに持って行っていた
子供だから「あれもほしい、これもほしい」という気持ちはあったので
『お小遣いをくれる大伯母=良い人』『お小遣いを取り上げる祖母や母=嫌い』と思ったりもしたけれど、そういった気持ちは年を重ねるごとに薄れていった
稀に見つからず、お小遣いを取り上げられずに済んだのだが、お小遣いを使った時は必ず不幸な目にあったからだ
五百円貰って自販機でジュースを一本買った時は、自転車と接触事故。千円貰ってコミックを一冊買った時は、突然フェンスが倒れてきて額を切り、2針縫った
五千円貰ってゲームを買った時は、車に跳ねられて足を折った

121: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)01:37:08 ID:mJS
欲-2/2

こうなってくると何となく、「大伯母のお金って良くない物なんじゃないだろうか……」と思ってしまう
手に入れた金額が大きく、使った金額が大きくなれば被害も大きくなる傾向にあるようだ
だとしたら、既に多額のお金を手にし、あちこちで散財している大伯母は、今でこそ無事だけれど、何か良くないことが起きるんじゃないだろうか……そんな予感がした

やがて、大伯母は亡くなった
如何様を疑われての見せしめだとか、どうやってその強運を手に入れたのか聞き出そうとしたに違いないとか言われていたけれど、真相は知らない。知りたくも無い
ただ一つはっきりしているのは、「子供には聞かせられないような惨たらしい亡くなり方をした」という事実だけ
葬儀は身内だけでひっそりと執り行われた
葬儀の最中、突然風も無いのに蝋燭の炎が揺らいで消えたり、かと思えばいきなり「ボッ」と音を立てて火の勢いが強くなったりした
どこからともなく卵が腐ったような臭いが漂ってきたり、突然仏壇の裏から「キョエーッ!!」と奇声が響いてきたり、地震でもないのに棺だけがガタガタガタッと激しく揺れたり
妙な出来事は多かったが、とりあえず何とか葬儀を終える
大伯母は独身で、貯えも沢山あったのだが、誰一人遺産を欲しがろうとしなかった
むしろ誰しもが持て余しているようだった。結局遺産はお寺に納められた

「あんお金はな、邪法で手に入れたものなんよ」
いつだったか、祖母が教えてくれた
やり方は知らないけれど、と前置きして祖母は言う
「直接誰かを傷つけるわけじゃ無くても、非合法なことで無くても、アンタはそんなものに頼ったらいけんよ」
祖母に言われ、頷いた

今も時々、大伯母の寂しそうな顔を思い出す
どんなにお金があっても、決して満たされることの無かった大伯母は今、何を思っているのだろうか……



123: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)01:47:46 ID:mJS
第43話 葛◆5fF4aBHyEs
祖母の話「狐火」-1/2

「昔々、そこの線路にまだ汽車が通っていた、婆ちゃんが女学生の頃の話だ」
祖母はそう切り出したが、自分が生まれた時にはとっくの昔に線路は廃線になっていたので、「汽車が通っていた」と言われても今一つ想像できなかった
「その時は何でか用事があってナァ、汽車に乗り損のうたんよ。その頃は今みたいに電話も無いでナァ、婆ちゃん、線路を歩いて帰ることにしたんよ」
学校から家までの距離は10キロほどだったらしい。「昔の人は健脚だから」と祖母は笑う。勿論、今はそんなことしちゃなんねぇけど、としっかり釘もさす
「所々にぽつんと外灯があるくらいで、後は真っ暗だ。月と星の明かりだけを頼りに歩いたが、『線路』っち言う『道』がハッキリしとうけん、怖くは無かったな」
そうしてしばらく歩き続けると、ふと前方に明かりが灯ったのだそうだ
「外灯の様に上から照らす明かりじゃのうて、人の胸くらいの高さでな。その明かりがふわり、ふわりと動くわけだ」
人魂かと驚く祖母の前で、明かりは一つ増え、二つ増え、と次第に数を増やしていく
「こりゃあマズい、と思うたが、よくよく見ると明かりは線路の上をゆっくり行ったり来たりしよるけん、もしかしたら、足元を照らしてくれよるのかち思うてな」
怖がってその場に留まっていても仕方がない、騙されたら騙された時、と祖母は腹を括り、再び線路を歩き始めたのだそうだ

124: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)01:48:25 ID:mJS
祖母の話「狐火」-2/2

「せやけど、行けども行けども家に辿り着くどころか、民家の一軒も見当たらん。こりゃどっかに連れ込まれて迷わされよるのかと思うたんよ」
意を決して線路から逸れ、葦を掻き分けて川に出ると、何故か普段は膝下までしかない水深が、どう見ても人の背以上の深さにしか見えなかったという
「仕方がないけん線路に戻ってまた歩き始めたんやが、今度は明かりの方が線路から逸れとってな」
明かりを頼りに歩いていた祖母は線路から外れたことを奇妙に思ったが、何となく明かりに従って線路を外れたのだそうだ
「そうすっと、向こうから汽車がやって来てナァ……」
危ないところだった。そう思うよりもまず、祖母は汽車が通っていることに驚いた
もう最後の汽車もとっくに終わっている。かといって、貨物車でも無い
驚く祖母の前を、汽車が通り抜ける
「……乗っとったんは皆、兵隊さんでナァ……皆同じような青白い顔で、ジィっとこっちを見とった」
汽車が通り過ぎてから、また誘うように明かりが線路の上に灯る
それに沿って歩いていると、すぐに家の前に出たのだという
「気が付くと明かりは消えとった。婆ちゃんの爺ちゃんに話したら、『そりゃきっと御狐様が助けてくれはったんやろう』ち言うてな」
翌日、近所の稲荷神社にお参りに行ってきたのだそうだ


もう既に廃線になって久しい線路だが、祖母はたまに「今でも夜中に汽車の音がする」と言っていた
あの線路には、今でも兵隊さんを乗せた汽車が走っているのかもしれない



126: たるたる◆t9nOsDb75I 2015/02/15(日)01:49:54 ID:5Br
第44話 伝説スポット突撃談(1/3)

うちの地元の山にはややオカルトめいた伝説がある
この山の頂上に池があるのだが、五百年前にこの地方を支配していた武将が敵に攻め込まれて逃げられず
馬とともにこの池に飛び込んで死んでしまったといわれる
以来、毎年大晦日の晩になると、この池に、馬の鞍だけがプカリと浮くという話だ
自分はこの話を確かめようと4~5年前の大晦日の晩にこの池に突撃した
大晦日の夜に山登り、どう考えてもバカである、山道はよく釣りにいくので懐中電灯だけで進める

頂上に到着、11時、寒い、雪まで降ってきた

127: 名無しさん@おーぷん 2015/02/15(日)01:54:08 ID:5Br
(2/3)
さて懐中電灯の明かりで池の表面を照らす・・・草がはえてるのみ
11時に頂上について12時になった、さすがに飽きてきて、もう降りようかと思いはじめた頃に池の向こうから何かの音がした
ドンドンドンドンドンドン と響くような音、明かりを向けたが何も見えない
音は断続的に辺りに響き、そのたびに自分はだんだん恐ろしくなってきた
懐中電灯の電池を入れ替えて周りを照らしたら、池の上にポツンと赤い玉のような物が見えた
すわ、人魂か?
しかし、それは動きも揺めきもしない
ドンドンドンドンドンドンと音がまた響く

128: たるたる◆t9nOsDb75I 2015/02/15(日)01:56:52 ID:5Br
(3/3)

ここにいたって急に強い恐怖を感じた自分は、赤い玉から目をそらし、そそくさと下山した

後にあの山のことを親に聞いたら、あの山は昔は「歳徳神(としとくじん)」の出る山だと言われていた、という
歳徳神がなんだか親にきいてもわからなかったが、ただ大晦日に出現するという
あの赤い玉のような物がそうだったのか?

しかし自分はもう確認に行く気はしない
あれを見る事自体が非常に良くない事のような気がするから


(おしまい)

130: 代理投稿立候補◆YtFiiqjbeo 2015/02/15(日)02:00:02 ID:mJS
雷鳥一号◆jgxp0RiZOM
【「ばいばい」】

知り合いの話。

彼女の家は、墓地のすぐ横にある。
まだ幼い長男が、いつも決まった場所に「ばいばい」と手を振るのだそうだ。
誰もいない墓所の中に向かって。

先日、友人が同い年の子を連れ遊びに来たのだが、やはりその子もそこに向けて
「ばいばい」と手を振っていたという。

「どうにも気持ち悪いけど、別にそれ以上怖い思いはしていないんだよね」
そう言って彼女は顔を顰めていた。


134: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/15(日)02:39:43 ID:Ua3
第46話  『バレンタインの復讐』 宵待草◆zGmkUMDv/mqt


閑話休題。看護師の友達から聞いた話。

医者のA先生は若くてスポーツもできてハンサムで。
当然もてていろんな女性と付き合っていたらしい。

ある日、女医のB子先生と結婚が決まったと聞いた時は皆驚いた。
なぜなら直前まで同じ女医のC美先生と付き合っていたから。
その上、B子先生が妊娠しているというのだ。
結婚式はお腹が目立たないうちにと2月になってしまって。
表向きはバレンタイン婚だとお祝いされてたけど、何か起きそうだと周りは思っていた。

案の上、結婚式も終わってうかれてたA先生が病院で電子カルテを開いてみると
まっしろ…というか、なんと予約が全部キャンセルになっていたらしい。
手術室の予約も…全部。

A先生がログアウトし忘れたIDを使って誰かが消したというのだ。
結局犯人はわからなかったけど、皆C美先生がやったと思っているそうだ。

幽霊よりも生きている人間の方が怖いというお話。

【了】

136: 川瀬◆8DcQWhttmU 2015/02/15(日)03:12:56 ID:hDn
第47話 原因不明の雲隠れ(1/2)

大学3年の時のこと、当時 剣道をやっており、毎日朝練があった
部室はグラウンドの向かい側にあり、朝、事務所で部室のカギを受け取って開けていた。
ところがその日はなぜか全員がカギを取ってくるのを忘れて、部室の前で立ち往生した
先輩の一人が一年のAに事務所までカギを取ってこさせた。
しかし5分たっても10分たってもAが戻ってこない
事務所は部室から見てグラウンドの反対側にあって距離があるのだが、それにしても
遅過ぎである
痺れを切らした先輩が別の一年部員Bに事務所へ行かせた。
Bはしばらくして戻ってきて、事務所にあったカギはAが持って行ったこと、Aが来たのは
10分ほど前だったこと、を伝えた。
要するに、Aは事務所までは普通に着いたが、カギをを受け取ったあと行方不明なわけだ
Aは性格が真面目で先輩たちにも好かれていたし、突然いたずらをするとは思えない

137: 川瀬◆8DcQWhttmU 2015/02/15(日)03:16:43 ID:hDn
(2/2)

とにかく、Aがカギを持ったままいなくなったので部室のドアは誰にも開けられず、
やがて主将以下全員揃ったが、部室に入れないので部室前にたむろするしかない
そのうえ雨まで降ってくるという最悪の状態になった
結局、全員で手分けしてAを探し、30分くらいしてAは見つかった
しかし、怒り心頭だったはずの先輩らはAに変にやさしく、他の者にも、今回の事
は許してやれ、理由は聞くな、と妙にAをかばった。
Aに何があったのか、訊くタイミングを逸したまま自分はもう卒業したが
非常に不思議だったし、先輩の態度ともどもいつか訊けたら訊いてみたいと思っている。

【終】

138: 川瀬◆8DcQWhttmU 2015/02/15(日)03:19:11 ID:hDn

no title

140: 薄荷柚子◆CYOadRFefE 2015/02/15(日)04:41:41 ID:wq1
第48話『街灯にまつわる話』(1/3)

私の実家は堤防沿いにある。家の北側は堤防と川しかない。
夜になれば真っ暗なのに、明かりと言えば向かいの家の前にある街灯だけだ。
その街灯も今時珍しい、木の電柱に傘と電球が付いているだけの物で、まったく心もとない。
近所でこんな古びた街灯はここだけだった。

数年前の話だ。夜9時頃家に向かう一本道を歩いていると、向かいの街灯の下に人がしゃがんでいるのを見かけた。
この一本道は堤防で行き止まり、しかも袋小路になっている為、
近所の人か堤防に用事のある人しか利用しない。誰だろう?と思いながら距離を縮めた。

近くで見るとその人物は知り合いではなかった。
首元ぐらいの長さの髪に地味な服装、中肉中背。
こちらに背を向けている為、男か女かまったく分からない。
片膝を付いて、微動だにせず堤防の暗闇を見つめている。
こっそりと家に入った私は母を呼んで、街灯の下の人物を見せた。
同じ場所で堤防を凝視し続けるその姿は、何かを待っている様にも見える。
怖くなった母は、向かいのM家に「お宅の前に不審者がいる」と連絡を入れた。
驚いたM家の旦那さんが外に出たところ、もう不審者はおらず、街灯の下にサンダルが揃えて置いてあったという。
話は近所に広まり、それからしばらくは皆、川で亡くなった人がいないか新聞記事を注意していた。


結局川で亡くなった人はいなかったが、不審者を見かけてから2ヶ月ほど後、何者かにより街灯の下に花が供えられていた。
白花メインのバスケットアレンジはとても豪華で、到底いたずらで置くレベルの物ではない。
M家では気味悪がって「迷惑になりますので持ち帰って下さい」と張り紙をしたが、一向に無くならない。
結局花が枯れた頃、M家で処分する事になった。
すると数日後にはまた新しい花が供えられている。そんな事が3度繰り返された。

141: 薄荷柚子◆CYOadRFefE 2015/02/15(日)04:44:24 ID:wq1
(2/3)

3度目の花を処分した後、犯人は捕まった。
M家の息子さんが早朝に帰宅した際、偶然にも花を供える現場を目撃したのだ。
犯人は小柄で白髪の老女だったという。どうやら私と母が見た人物とは別人らしい。
花を供えた理由を聞いても「ここに娘がいる」と言うばかりで要領を得ない。
それでも根気よく聞き出すと、娘さんは数年前に病死したらしい事、
拝み屋の様な人に「娘さんがこの街灯の下にいる」と言われたらしい事が分かった。
(肝心の、何故この街灯の下なのか?については解明されなかったが。)

老女はどうも認知症を患っているようだったので、M家では大事にはせず
花を供えないよう説得して、そのまま帰したそうだ。
その後この街灯に花が手向けられる事は無くなった。


そして3ヶ月ほど前、行きつけの店の主人からこんな話を聞いた。常連客の体験だという。

その女性はウォーキングが趣味で、堤防が定番コースだった。
ある日歩き始めが遅くなり、折り返し地点に来た頃には日が落ちてしまった。
歩きなれた道とはいえ、夜の堤防を歩くのは怖い。そこで堤防を降りて、住宅街を抜けて帰る事にした。
住宅街に入るとすぐ街灯が見えた。古びた木の街灯だったけれど、明かりがあるだけでほっとしたという。


ここまで聞いて予感がした私は、その街灯の事を詳しく尋ねた。果たしてそれは、件の街灯であった。
実家の向かいにある街灯だと分かり、店主と二人驚く。更に店主が語るところによると…


女性が街灯の下を通り過ぎたその時、急に明かりが揺れ出した。
丁度それは、大きな蛾が群がっているような光の明滅だったという。
振り返ると、街灯の下に何かがぶら下がっている。眩しくて見づらいため一、二歩戻ったが、異様な光景に足を止めた。

ぶら下がっていたのは、麻袋に入った人だった。

142: 薄荷柚子◆CYOadRFefE 2015/02/15(日)04:48:56 ID:wq1
(3/3)

頭部は袋から出ているが、長い髪を振り乱して顔は見えない。
その人は街灯が揺れるほど必死にもがいている。反射的に助けなければと思ったが、
先ほど堤防から降りた時には、こんな物を見た覚えがない。
しかしあまりに生々しいので、夢とも現とも判断がつかず、ただただ見上げていたそうだ。

麻袋を下げてあった紐が千切れたのか、地面に人が叩きつけられる音で、女性は我に返った。
自分の2mほど前に落ちているそれは明らかな質量を持つ“この世のもの”にしか見えない。
やはり助けなければ、そう思った女性の目の前で、麻袋からうつ伏せに人が這い出して来た。
その女性は「ぬるり」と表現していたそうだ。とにかく人の動きではなかった、と。
それは一瞬にして女性の足元に到達していた。
2mは離れていたはずなのに、今は女性の爪先に額を預けている。
質量はあるが、この世のものかと問われると…
女性は全速力でその場から逃げ出したそうだ。


今後もあの街灯の下で奇妙な事が起こるのか、楽しみでもあり恐ろしくもある。
とりあえずもう自分は体験したくないので、夜間は近づかないようにしているのだが。

【了】

149: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/20(金)17:37:08 ID:qVe
第49話 『電話』 葛◆5fF4aBHyEs


自分とヒナ(仮名)とケイ(仮名)の3人で涼を求めて山にドライブに出掛けた
そこは頂上にキャンプ場がある関係で、車で頂上まで登れる
目的はキャンプ場ではなくその手前の小さな沢なのだが

いい年した社会人が真夏の昼日中に3人揃って水遊びというのも切ない
釣り竿も一応持ってきていたが、渓流釣りは早々に諦めていた
しかも鬱蒼と茂った木のせいか、蚊も多い
それでも清涼な水の冷たさが気持ち良かった

ひとしきり涼を満喫してさあ帰ろうかという時、プルルル……とケイの電話が鳴り始めた
「あ、もしもし母ちゃん?」
3人して車に戻りながら、ケイが話している
あ、ここ電波入るんだ。頂上なら入るのは知ってたけど
そう思って自分の携帯を取り出すが、表示は『圏外』になっていた
ケイとはキャリアが違うからかな?もしくは自分のガラケーとケイのスマホで何か違うんだろうか
呑気にそう考える自分と違って、ケイと同じキャリア、同じ機種のヒナが青くなる
「ケイ、電話切って!」
「え?」
ケイが耳元から電話を離した次の瞬間、

『ヒヒヒヒッ』

携帯から不気味な笑い声が響いて、「うわっ」と叫んだケイの手から携帯が落ちる
そのまま誰も動けずに、落ちた携帯をじっと見ていた
やがて意を決したケイが、恐る恐る携帯を拾い上げる
携帯は液晶画面が割れ、電源が落ちていた
3人して押し黙っているせいか、やけに蝉の声が大きく感じられた。暑かった太陽の熱気が、今は重く、ねっとりとまとわりつくようだった
3人して顔を見合わせ、ケイが電源を入れる
……電源が入る一瞬、画面の中に白っぽい人影が見えたのは気のせいだろうか
画面の表示は『圏外』。ケイの着信履歴は、遊びに誘ったヒナからの着信が最後になっていた

逃げるように山を降り、ケイはその足で携帯を変えに行った
今でもたまに3人で遊ぶのだが、誰もあの山には近付こうとしない


151: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/20(金)17:46:20 ID:qVe
第50話  葛◆5fF4aBHyEs
影-1/2

視界の隅をサッと黒い影が横切った気がして顔を上げる
……何の変哲も無い、いつも通りの大学の食堂の風景
向かいでカレーを食べていた友人が、私の様子に気付いて不思議そうに首を傾げる
「どうかした?」
「ううん、別に……」
気のせいか。そう思って私は手元の親子丼に視線を戻した

廊下で友人と話していると、視界の隅を黒い影が走る。正門からふと見上げると、窓のところを何かが通り過ぎる
そんなことが何度かあるうち、私は黒い影が通る時、必ずある男性がその近くに居ることに気が付いた
学年は1コ下らしい。細身だが、背がかなり高く、眼鏡をかけている。交友関係はかなり広いようだ。所属はテニスサークル
……気になるとつい目で追ってしまったせいで、かなり彼に詳しくなってしまった。これじゃまるでストーカーだ

そうこうしているうちに、夏休みに入った
私は里帰りしたこともあって、彼のことなどすっかり忘れていたのだが
夏休み明けに見掛けた彼は、以前とは全く違っていた
……何と表現したらいいのだろう。彼の周囲がぼやけて見える。というより、『ブレて』見える
二重にズレた印刷を見ているような感じで、じっと見ていると酔ったように気分が悪くなる
自分の目がどうかしたんじゃないかと思ったけれど、そんな現象は彼と彼の周囲にしか起きていない

気にはなるけれど、まさか聞くわけにもいかない。そもそも私は彼と親しい訳でもないのだし
……でも気になる
そんな葛藤を続けていたある日、前日に徹夜していて眠かった私は、一日中机に突っ伏して眠っていた
眠っていたといっても半覚醒のような状態で、人のざわめきなどを聞くともなしに聞いていた
そんな中、一つの足音が近づいてくる

152: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/20(金)17:47:59 ID:qVe
影-2/2

ああ、この机の横を通ってるんだな
ぼんやりとそう思った次の瞬間、

「……よく分かったな」

ぼそりと囁くような低い声が聞こえて、ガバッと飛び起きた
その勢いに、隣を歩いていた『彼』が驚く
今のは彼の声によく似ていた……?
彼は私の様子に、不思議そいに首を傾げながら、通り過ぎて行った


数年後、彼が逮捕されたニュースを見た
そこには、『爽やか』で『人当たりもよく』、『朗らか』だった彼とは似ても似つかない罪状が並んでいた
彼を知る人たちは、口を揃えてこう言った
「彼は突然、『まるでとり憑かれたように』人が変わった」、と
だが、私は思うのだ
あれは、『とり憑かれた』のではなく、もしかしたら……


154: 宵待草@代理投稿◆zGmkUMDv/mqt 2015/02/20(金)18:00:28 ID:qVe
第51話  ナカさまの作品

まだ、私が、高校生の頃の夏の話だ。
鹿児島の本駅(今では、新幹線の駅)の裏側5~6分の所のマンションに母と2人で住んでいた。
その当時あまりクーラーが得意でなく、寝るときだけ窓を開け放した部屋に布団を、2つ並べて敷き、母と並んで寝ていた。
 ある夜 ふと目が覚めると突然、突風がふきカーテンが、揺れた瞬間、体の上にズシンと何かが乗ってきた感触、
その後、砂が積もるように人の形が出来上がっていった。テレビの砂嵐模様の人だ。体は金縛りにあい、動かない。
すごい力で首を絞めてくる。何か凄い悪意と殺意とを感じた。
私ができることは少し首を動かすことと唸ることぐらい。どれぐらい時間が経ったのか、隣から母の声。
「大丈夫?どうした?」。すると突然、体の上の砂嵐模様の人型のものが風に吹かれた砂のように消えた。
どうもその母の声で消えたらしい。
私は、やっと自由になり身体を、起し「ゴホッ ゴホッ」と咳をし、母に今、あった事を、そのまま話した。
 母も何か異様な雰囲気を感じて起きたらしい。その夜は、窓を閉め、クーラーをかけ寝ることになったが、
金縛りにあい、幽霊らしきものを、見たことも数回あったが、あまりに先ほどの体験が強烈で朝まで一睡もできなかった。
それ以降、窓を開け寝ることはなく、得意ではないクーラーをかけ寝ることになった。